7年前の康君は頼りになって優しくていつも助けてくれて。
暖かい目で笑う憧れのお兄ちゃんって感じだったのに…
今もそれは変わらないと言えば変わらないんだけど。
何と言うか…意地悪になった…ような気がする。
さっき“お嬢様”じゃなくて名前で呼んでくれたのは嬉しかったのに、なんか落ち着かない。
「それで、話せよ。何があったのか」
私は噂のこと、そのせいで大事な親友が傷付いたことを話した。
康君は表情一つ変えずに黙って聞いてくれた。
「…康君?」
一通り話し終わっても康君は何も反応しない。
ベッドに浅く腰を掛け、膝に肘をつき黙って何か考え事をしている様子だった。
「…気に入らないな」
数十秒の沈黙の後、康君のいつもより低い声が空気を震わせた。
その声に心臓が重くドクンッと波を打つ。
まただ…私の知らない康君の姿。
怒った所を見たことがないぐらい温厚な康君が、こんな恐怖を感じるような声を出すんだ。

