突然そんな話を聞かされたって…そうさ、証拠がなければ信ずるに値はしない。
どうかこの喉が、「おまえはインチキだ」と罵って彼を絶望させてはくれまいかと願う。
「ノエル、お前は一体誰なんだ」
「歴史書の管理人といえば半分は当たるんだろうけど、でも今のところはただの魔術師といったほうが正しいかな」
「魔術師は未来を言い当てるのか」
「魔術師は、そんなことしないよ。
『言い当てる』ようなことをしているのは俺の相棒だし、俺は「ルールブックを編纂したい」って言ってる彼のお手伝いをしてるだけ。
傍にいてできるだけ守っているだけ」
「……………」
「もたもたしている間に、彼が迎えに来ちゃったようだよ」
ノエルは背中を仰け反って無理矢理にステンドガラスを見た。
暖色の多いガラスの色は、しばらく見つめているとその向こう側に不穏な黒い影を映しだす。
その姿を確認した直後、ステンドガラスが壮絶な音をして割れると真っ黒な塊が教会の中に転がり込んできた。


