オリゾン・グリーズ




「ラムル帝国は9年後、『来るべき日の戦い』という戦争に敗れ滅亡する」



「なんだと!」



クリストハルトは立ちあがり、ノエルの胸倉を掴んだ。



「そんな馬鹿なことがあるものか、敗退しても帝国そのものが滅亡するなど五帝国を定めた神意に違反する!」



「でもそれが来るべき日に訪れた事実だ。

ラムルの敗因は騎士団を率いる7人の将軍が来るべき日までに全員殺害されたため、つまりは彼らが来るべき日の帝国に揃っていれば戦争はラムルの勝利に終わり滅亡もしなかった。


そういう事実があるんだ」



「どこに!」



「それは俺の相棒がいないと見せられないけれど、でも歴史書‹ルールブック›に『そう書いてしまった』んだ。

それを阻止するために、俺達は来るべき日が来るまで7人を生かさなければならない」



ラムルを守るために、と付け加え、ノエルは爛々とした目をクリストハルトに向けた。


その碧眼は、海のような色とは一変炎のように燃え上がり、心臓を掴まれているような緊迫がある。




「君は9年後、その7人の一人として名を馳せている」



「………」



クリストハルトは掴んだ襟を離し、座りなおした。