【2】
「俺お前のこと嫌い」
相変わらずふくれっ面の青年は、名前をノエルというらしい。
苗字の方はいくら聞いても「ない」の一点張りで、ノエルという名前も果たして本名か否か疑わしいが、まあ呼ぶ名前があれば構わないだろう。
結局お偉方に突き出されたノエルは、椅子に縛られ尋問を受けていた。
いつ、どこから襲撃隊がくるのかを執拗に問いただされるが、本人は「教えてあげない」と言い張っている。
教えてくれないということは知ってはいるらしい。
業を煮やした口髭の怖いおじさんは、もうそろそろ拷問に取り掛かろうという勢いで憤っていた。
そのおじさんを落ち着かせようということで、別の団員がおじさんを連れ出していて今ノエルと対峙しているのはクリストハルトだけである。
「なんでお前みたいなのを助けなきゃなんないのかなー、いっそ戦火でくたばればいいのに」
「助ける気があるのなら、いい加減その襲撃について教えてくれ」
「…………」
ノエルは、不意に意味ありげに無表情をクリストハルトに向け、茫然とした目で彼をじっと見つめた。
威圧、というには弱すぎるが、なにか彼を押すものがあり、クリストハルトはたじろいだ。


