「お前、一緒に来い」
「えー、どうして」
えー、とごねる声色は女のようにじれったい。
「あのな、お前がさっき俺の名前を言い当てたのには驚いたが、街で訊ねれば顔と名前の一致くらい難しくないことだろう」
「俺街には出ていないけど」
「それを証明はできん。
ついでに、さっき俺がその銀の本を見つけたことも『お前が言い当てた』のではなく『見たことをそのまま言った』可能性のほうが高い。
そういうことを疑えば、さっきの騎士団襲撃の話は『お前がそれを仕組んでいる』と疑ったほうが現実的だ。
違うか」
「…………」
青年は口をあんぐり開けて、もともと白い肌の顔が青白くなっていくのが見て取れた。
「どうしてそうなっちゃうの!?」
「普通そうなるだろ!
騎士団召集のお偉方に突き出してやるからちょっと来い!」
「いやだよ俺偉い人嫌いだもん!」
「もんって言うな、来いこの女男!」
「やだもん、ちょ、話せカタブツ!
俺これから嫁と待ち合わせしてるんだからってあああああああああっ!!」
埃まみれの図書館内が、すぐに白いふわふわで喉を襲撃したのであった。


