オリゾン・グリーズ




本棚の間から、ひょっこり蒼髪の人が顔を出してにこにこ笑っている。



「君がその気でも、俺達は阻止しに行くよ」



「なにを言っているんだ、おまえは」



「君は常識あって賢いようだから事実くらいは受け止められるだろう、いいかい。

『君が銀の本を見つけ手に取ろうとし、そのことを俺が君の名前とともに言い当てた』ことは君が目の前で確認した間違えようのない事実。

これがルールなのは明白なこと。


だから言っておくけれど、今夜この街にシードル兵がやってきて募った騎士団は君を除いて全滅する。


これが起きることは事実だよ」




「……………」



クリストハルトは、いよいよ目の前の青年の言動が信じられなくなってきた。



予言者とでも言うのか。



未来を言い当てることができるのか、それは必ずしも不可思議な力を持ちえる人間でなくとも、『それを仕組んだ人物』であれば訳はない。



クリストハルトは振り返り、ふざけ半分のようにおどけた笑い方の青年をじっと睨みつけた。



冗談か本気かが判別できない表情でいるから性質がわるい。



彼が『仕組んだ人間』であれば、つまりそれはラムル兵としては見逃してはいけない人物である。



クリストハルトは低くうなった。