今日は、"死神の日"。
過去数年前、この小さな国の人口の過半数が削られた日。


同時に今日は、僕の誕生日。
僕ひとりが生まれて、たくさんの人が亡くなった日。


その事実を知らない子供が、削られた過半数を埋めた。


「今日は何の日?」

4月2日に上書きされた日の名前を、確認し合う子供たち。

「死神の日だよ。午後に慰霊碑行かなきゃ」
「俺ん家も!めんどくせぇよなっ」

何も知らない子供たちには、面倒な日。


「今日は何の日?」
「死神の日」


決められた答えが、至る所で繰り返される。
僕はうわべだけの友達の隣を俯いて歩いていた。


「あ、」
名前もいまだに覚えられない友達が、立ち止まった。


もしかして、僕の誕生日。思い出した?


「ルーナじゃん」


僕の隣から剥がれていくように、数人が駆けだした。
独りは嫌い。僕も重い足取りでみんなを追った。


「ルーナ!」

名前を呼ばれた君は、ビックリしたように振り返る。


「今日は何の日か知ってる?」


決められた返答を、待った。


「え、レインの誕生日でしょ?」


当たり前でしょ、とでも言うような表情。
僕でさえも、正直信じられなかった。

君だけが、もうひとつの今日を知っていた。


「あ、そういえば」
「いや、忘れてたわけじゃないよな」


誤魔化す友達を視界を隅に追いやり、
君は柔らかい笑顔を僕なんかに向けてくれた。


「レイン、10歳おめでとう」


君の頭の中の、大切な記憶のスペースに。
僕なんかが居座っちゃってごめんなさい。


心の底から嬉しかったけど、
何だか熱いものが込み上げてきて。


「うん」


物足りない返事。それだけしか言えなかった。


僕は上手く笑えただろうか?


#02.You know,today is...
(僕を認識してくれた君)
(少しだけ今日を好きになれた)