一定のリズムを刻んで、背後から近寄ってくる。
振り返らずとも僕なんかに近寄るのは君しかいない。

だから、すぐにわかる。

「レイン」
「ん?」

適当に返事を返して振り返った瞬間、視界に広がる赤。
絹のような白い腕に描かれた擦り傷。

「どうしたの、それ」
「……転んだの」

うすくはがれた痛々しい皮膚と、滲みでる血液。

「ひとりじゃ上手く巻けないから……」


もう片方の手に握られた包帯を僕に渡された。


その細い腕を一回巻くのに、そうそう時間はかからない。
グルグルと患部を覆っていくにつれて隠れる傷跡。


「あ、もういいよ」


僕は、その声を無視した。


「え、レイン?」


縛り上げるように、感情のままにきつく。
白いそれを君の体に強く巻きつけ締め付けた。


「痛っ……!」


苦痛に歪む顔、困惑した表情、……そそる。


きつく、きつく、縛り上げて。

君は僕だけのものという証。

何処かに行ってしまわないように。


でも、そんなの夢物語だってわかってるから。


「ごめん、ふざけただけ」


君が泣きだしそうになる寸前に、仮面をかぶった。
単純な君はすぐに安心した表情を浮かべた。


ほんとは僕、狂ってる。


#01.Chain
(鎖より、白が似合う)
(どれだけ苦しいか気づいてるの)