「レイン」


身体の隅々にまで刻まれた声。

反射的に振り返ってしまう残酷な癖。


「好き」


綺麗な白い歯が小さく覗いた。

澄んだ瞳が三日月みたいな弧を描いた。


決して許されない言葉を、君の口が吐いた。


「嘘だよ」


いたずらが成功した子供の表情。

気のせいだろううか、君の瞳がちょっと揺らいだ。


「だって、今日は」
「エイプリルフール」


弁解するその声を遮って、制するように言い放った。


「何だ、知ってたの」


今度は間違いじゃない。君の瞳が揺らいだ。


「バイバイ」


無理やり作った笑顔と、不自然なくらい早足の別れ。

小さくなって、やがて背中が消えるのを確認してから、


僕は泣き崩れた。


同じように、


君も何処かで泣いているような気がした。


#00.Aprilfool
(嘘でも嬉しかった少年と、)
(嘘でも伝えたかった少女の)