「お、俺だよ」

聞き覚えのある声に空気が止まった。



「驚かせちゃった?」

ちらりと声の主を確かめる。

(やっぱり・・・)


三ヶ月ぶりに見る顔は幻のよう。
でも、間違いなくその人は
私が大好きだった人。

(でも、どうして?)


「そっか、この子を迎えにきたんだ」
(ダメ。そんなこと言っちゃ)

「ほら、ご主人様だよ。良かったね。君は捨てられてなんかいなかったんだよ」

おもわず声が詰まる。
涙を悟られないよう伏せ目がちに、手に持った首ひもを差し出す。


「そうじゃないんだ」
(いいえ、ちゃんとわかってる。いろいろ噂は聞いている)

「やっと帰ってこれたんだ。あの日、宇宙人に捕まっちゃってさ。UFOに乗せられて、本当だって。ついさっきまで捕まってて、気が付いたらここに倒れていたんだ」


そっと顔を上げると真面目な顔をして真っ直ぐに私を見つめている。

「どんなに非道いことをされたか、家に帰ってから教えてあげる。ほら茶太郎、行くぞ」

首ひもを受け取り、有無を言わさず、私の手を取った。

(宇宙人だなんて)

あまりにバカバカしくて、
涙もどこかへふき飛んでいた。


肩をぶつけて歩きながら、でも
ちょっと信じてみようと思っていた。


       おわり