ちょっと、そんなに吠えないでよ。

(いったい、どうしたんだか)

茂みの奥を訝しげにのぞきこむと、君はちぎれんばかりに尻尾を振っている。

揺れる尻尾越しに見えたのは、
横たわる人影だった。

(うそっ、死体?)

背中が凍り付く。
思わず後ずさりする。

(どうしよう)

頭の中でスパークしそうなほどに思考が交錯する。


『ガサッ』

その人影がぴくりと動いた。
全ての思考がストップする。

次の瞬間、突然その人影は起きあがった。

「ご、ごめんなさい・・」

焦って、うろたえて、顔も見ずに云う。

(死体だなんて、誰が云ったのよ)

もう、恥ずかしいったらない。

それなのに君ときたら、馬鹿みたいに吠え続けているし。

(責任取りなさいよ)


首ひもをおもいっきり引っぱった。