本当は私は君が嫌い。

それなのに、
君はいっしょに出かけようと言わんばかりに私を見上げる。

(仕方ないなぁ)

私は玄関の壁にかけた首ひもに手を伸ばす。


どうして、君はここにいるの?
ご主人様に見捨てられたから?

川沿いの道を引っ張られながら、
君の後ろ姿を見つめる。


私にだってわかってる。

見捨てられたのは私の方。



「だめよ。そっちへ行っちゃ」

人の気も知らないで、君はかってに茂みの中に入り込んでいく。