『ねぇ、真帆?もういい加減彼氏作ったら?』

『う…ん。わかってるよ。』

『ゆっくりだね。』


この静かな空間が好き。


『寿々ちゃん、今日は遅くまで付き合ってくれてありがと。また明日ね。』

『気を付けなよ~っ。』


私は夜道をてくてく歩く。

前から人が近づいてくる。


『あの。』

『…?私ですか?』

『はい、あの、山城さん家ってどこですか?』


魁の家…?


『私の家の近くなんで案内しましょうか?』

『あ、お願いします。』


このときはまだ彼の顔を見なかった。
というか、暗くてわからなかった。


『ここです。では、私はこれで。』

『ありがとう。また会えるといいね。』


その時に玄関の照明で照らされた彼の顔は。

魁にそっくりだった。



『じゃぁ。』


ペコッと頭を下げて家に入る。


『ただいま~っ。』

『あ、姉ちゃんお帰り。』

『お帰り、真帆。』


帰るとお姉ちゃんと弟が迎えてくれる。


お姉ちゃんは、安崎優里(あんざきゆり)。
大学2年。

弟は、安崎龍人(あんざきりゅうじ)。
中1。


『お父さんは?』

『まだ仕事だよ。さ、ご飯たべよ。』

『龍人、て洗った?』

『まだ~っ。』


私んちは父子家庭で、四人家族。


お姉ちゃんは看護師を目指してて、弟は勉強を頑張ってる。

私だけ写真してていいのかな。


『真帆、また余計なこと考えてたんでしょう。』

『え?』

『姉ちゃん、どうせ私だけ好きなことやってていいのかなとかおもってんだろ。』

『それはっ…』

『真帆はしていいの。希望なんだから。』


私が…希望…?

魁が生きていた方がずっといい希望だったのに。


『ばーか。魁兄ちゃんは戻ってこないんだよ。悔やんでどうするんだよ。今をどう過ごすかだろ?』


龍人の言うとおりなのかな。


ちょっとは希望を持たないとね。