【Haduki】



一番風呂、いい言葉だ。



「東雲先輩、イメージ通りやっぱ押せ押せだよねぇ」



あの綺麗な顔で平然と抱きしめるとか、私を殺す気なのかと思う。

あったかい湯船に浸かりながら東雲先輩のことを思い返した。

なんだかモチーフ、居候と頼んでるうちに私の心の中まで覗かれるような気分になる。



「葉月ちゃん、ここに着替え置くわよ」

「あ! 桔梗さん、ありがとうございます!」



すりガラスの向こうから、桔梗さんが声をかけてくれる。

家に人がいるってこういう感覚だった。

ついこの間まで同じように家族とか、使用人の人達と暮らしていたのに、それが随分と昔の話のように感じていた。



「ふふ、葉月ちゃんが可愛い女の子でよかったわ。今までの方たちは私みたいな使用人なんかが声をかければ怒り狂って大変だったもの」

「うーん、なんだかかばえない女性陣に今日あったので何とも言えません」

「家がお金持ちになると、やっぱり高飛車な子ばかりなのかしら? うちの子もそうじゃなければいいわ」



東雲先輩……のことだろうか、彼はもう高飛車とかでは済まないと思う。

桔梗さんもそう思ったのか、しばらく黙ってから忘れて、と言っていた。