【Haduki】
「泣くなよ、俺は慰め方は知らねえからな」
東雲先輩が、静かに私を抱き寄せてきた。
だから、こんなことばっかりするから、すぐモテちゃうんですよ、といつもなら軽口たたけるところなのに。
私は先輩にすがってしまわないように、拳を握ることしかできなかった。
すがればいいのに、すがることは、きっと許されないから。
「泣いて、ませんよ。見間違いです」
「……そうか」
しばらく抱き寄せられていたが、私はやんわりとその体を離した。
東雲先輩の、飄々とした、綺麗な顔。
それが近寄ってきて、耳元に落ち着く。
「泣きたいなら泣いてもいいんだぜ」
「~~ッ、いちいち、近いです!」
「待て、泣くのをやめるな」
「そんなのッ」
やめなきゃ叱られるんです!、と出かかった言葉を飲み込むように口を手で塞いだ。
どうしてそんな、私のことを知ったように弱いところばかりついてくるの。

