鮮烈な赤に酔う






伊勢もそれに気づき、

自信ありげな笑顔が、一瞬で困惑の色に染まった。

なぜ、と顔に書いてある。


不意に笑いがこみ上げた。

そういうやつだよなぁ、てめぇ。

俺は口角をあげるだけで笑うと、

藤原がこちらに向かって歩いてきた。



「羨ましい限りですよ! そんな美人さん連れて!」

「悪いなぁ、ちんちくりん。俺はお前と違ってイケメンと呼ばれる部類だから」

「確かにね! 東雲先輩はかっこいいですけど、それよりも!

普段は伊勢先輩の方が麗しいですー」



と、言い切ってからふぅ、と伊勢を見上げる。

効果音をつけるなら『うっとり』。

なんで俺より女子に目が行くんだよ。ふざけんな。


伊勢が困ったように、こちらに目線をよこしてくる。

そりゃ困るよな。


「伊勢、変態野郎は置いといて行くぞ」

「は、はい」

「変態でも野郎でもないですー訂正してくださいー」


といいつつ、目線はまだ伊勢だ。


「ちんちくりんと違って俺らは忙しいんだ」

「伊勢先輩も忙しいんですか?」

「え、えぇ」

「ならば仕方ない。伊勢先輩、気をつけて帰ってくださいね」


にっこり笑う藤原に嫌気がさした。