どうやら、藤原は美術室に入り浸っているらしい。浜本珊瑚情報だ。
……あいつホントに主席か? 俺が言えた事じゃないが。(主席)


本館三階、最奥。ひっそりとある美術準備室B。
入ったことが無い。


チャイムが鳴っていた。四時間目が始まる。



『藤原さん、貴女には期待してるのよ』

『はぁ……ソレ中学でも散々言われましたよ先生ぇ』

『それだけ貴女には素晴らしい才能があるのよ』

『……はい』

『貴女の素敵な絵が美術界に残ることを祈ってるわ』



美術準備室Bから美術教師が出てくる。

話の内容からして中には藤原がいるらしい。ビンゴだ。


「……あら、そこにいるのは東雲君?」

「あぁ。わりぃが名前で呼ばれるのは苦手なんだ」

「はい、でしょう? じゃあ貴方、と呼びましょうか。ふふ、素敵な赤い髪だけど、やっぱり目立つのね」

「地毛だ――――誰も信じちゃくれないがな」


てめぇもそうだろ、と笑ってやると教師は面食らったように目を開いた。

それからまたあの独特の含み笑いを残す。


「ふふ――――てめぇ、じゃなくて鳩羽(はとば)先生でしょう?」

「知らなかった、わりぃな。下の名前は」

「霞(かすみ)。苗字ぐらい覚えるといいわよ」

「……名前に何の意味がある?」

「――――さぁ? 藤原さんに聞いてみればいいんじゃない」


気に入ってるんでしょう? 、と笑われる。

やっぱり美術に関わる者には変人が多い。