「――――という感じでかっこいい先輩が来たわけですよ」
「かっこいい先輩って誰よ」
「東雲紅我センパイ」
「……東雲先輩?」
「うん」
東雲先輩、もとい在学生の東雲紅我――――、私の中の赤い人。
いつも鮮烈で、強かで、悠然とした肉食獣。
先輩の名を出すと、珊瑚の顔が凍りついた。
「アンタ……まさかあの人に許可なく呼んでるんじゃないでしょうね」
「なんて?」
「『東雲先輩』、って呼び方よ!」
ばんっ、と机が叩かれる。
机の上のアイスティーが揺れる。
周りの女の子達も、その音と声に驚いたように振り返り、はっとして顔を青く染める。
一体何だって言うの。

