人じゃなくても別にいい。
自分がどうなってもいい。
だって『私』は誰よりも

『私』が大嫌いだから。

そんな『私』に声なんてかかるわけない。
(帰ろう…)
そう思ったとき、
「ねぇ……希伊奈さん……だよね?」
『……え?』
何年かぶりに名前を呼ばれてびっくり……じゃない。
『……誰?』
文学少女みたいな大人しめな顔に長く艶やかな黒髪。
きっとこの子は愛されて育ったんだ。
「私は水戸。下の名前は華蘭。」
『水戸…さん。』
久しぶりに人の名前を読んだ気がする。声ががらがらだ。
『何か用?』
「えーと、希伊奈さん何の部活に入るのかなーっと思って」
ブカツ?…あ、部活か。
『特に決めてない』
「あ、だったら一緒に吹奏楽部入らない?」
―『私』に久しぶりに声をかけて来た人が部活に誘ってきた。
どうしよう。どうしよう。
『……いいよ』
「わっほんと!?」
……断れなかった…