「舞」

翼は、ヘルメットをはずしてそういうと、

「なんか用?そんな走ったらぶっ倒れるぞ」


と心配そうに舞ちゃんを見た。



舞ちゃんは、いつもだったら嬉しそうに目じりをさげて笑うのに、今日は、下を向いたまま顔を上げようとはしなかった。


「まさか、また病気、わるくなったんじゃ」


翼は、バイクから降りて、舞ちゃんの顔を見た。


「大丈夫。病気は悪くなってない。でも、明日検査だから、どうなるのか、ちょっとまだ不安。」


舞ちゃんはそういいながらも、したをみたまま顔をあげない。地面には、大きな石が2、3個転がっているだけで、別に珍しいものなど落ちてるわけでもない。



「んじゃ、なんか用があったから来たんじゃないの?こんな息を切らして、走ってくるなんて、よっぽどの用事がない限りないよね。」



私は、舞ちゃんに向かってそういうと、舞ちゃんが顔を上げてくれるのをまった。



「実は…」


舞ちゃんは目を閉じで、大きく深呼吸した。手はぎゅっと握って拳を作っていた。



「大丈夫か?」


翼はそういって舞ちゃんに手をさしのべた。すると、舞ちゃんはその翼の手を振り払って大きな声で言った。


「もう、心配しないで!!!」



そして、舞ちゃんは続けた。


「やっと分かった。翼はいつも私の傍にいてくれたから、やっと分かった。病室に、私のお見舞いに来ても、いっつも話すのは、晴笑ちゃんのことばっかり。最初は、いやだって思ったよ?でも、」



はぁはぁとまだ息は荒く、言葉をとぎらせながら必死に言った。




「でも、私翼の一番になりたかったのかも。」



「それはどーいう意味?」


私は、ヘルメットを脱ぎ、舞ちゃんをみた。