私は、目を閉じて、翼の大きな背中に頭をこつんとぶつけた。


「安全運転でお願いします。」


「だーいじょーぶ。任せろ」


翼はそういいながらも、わざとスピードをあげて私をからかっていた。最初会ったときと変わらない、堂々とした笑顔で。



正樹の言ってた事が本当なら、舞ちゃんと付き合ってたのは、「好き」っていう愛情じゃなくて守らないと、っていう「義務」だったって事?



翼が舞ちゃんと付き合ってたのは、舞ちゃんが体が丈夫じゃないって事、そして、舞ちゃんは翼が傍にいてくれないと、ますます具合が悪くなっちゃうから。



翼は、先の事なんて全然考えないで、無我夢中で、突っ走っていくタイプだから、付き合い始めた当時は、この「命」の重みなんて、きっと全然わかってなかったんじゃないのかな?



でも……



「俺さー。」



翼は、ゆっくりと口を開いた。



「うん。」



私は、翼の背中を掴んだまま、加速するバイクにまたがっていた。



「俺、二人分の命、背負ってんだよ。」



その言葉を聞いたとたん、跳ね上がる脳に心臓が動いたような気がした。



やっぱり、正樹のあの話、本当だったんだ。



初めて翼の口から出てきた「二人分の命」



その二人とは、きっと……



「俺、舞を一生守ってやんねぇと、駄目なんだ。」