-正樹side-


あれは、たしか。運動会前日だったかな。


みんなは、放課後一生懸命運動会の準備をしていた。


「獅子奮迅」と書かれた力強いスローガンが、校舎の真ん中に張り出され、グランドは、各陣地のテントが建てられ、


大運動会という幕も学校のベランダからつるさせていて、風邪が吹くとゆらゆらと風にあおられていた。



先生や生徒が一丸となって、運動会の準備を進める姿は、なんともいえない魅力があった。



大きな荷物をみんなで協力して運ぶ姿。


学校の中で、装飾を頑張って作ってる女子。


頑張ってねなんていって、明日に備えて、ミサンガをつけあうカップル。



応援団は、男子の学ランを借りて応援するので、男女ともに楽しそうだ。


先生たちも、いよいよ明日だという緊張と興奮でいつもより優しかったのを覚えている。



夕焼けに顔を照らされ、みんなちょっと赤く日に焼けた顔は、たくましかった。



俺は、その時晴笑の具合が悪いと聞いて、急いで駆けつけたんだっけ。


でも、そこには晴笑だけじゃなくて、翼もいた。



俺はその時、「橋場翼」っていう存在にイラついていて、二人が一緒にいる姿をみて、無性にイライラしたんだ。



ようするに…、そう。ヤキモチってやつかな。