「え?正樹?ってあの、正樹が?付き合ってる人……って私だよ?何?今日エイプリルフール……じゃないよね。完璧。んじゃあ。これって?何?」


私はあははと笑い飛ばした。信じてなかった最初は。


「今日は、エイプリルフールじゃないです。本当の話です。」


「嘘つかないでよ~。ね。圭太。」


「僕、正樹と同じ中学だったんです。」


「え……」

そういえば、そうかも。私の事は「晴笑さん」って呼ぶのに、正樹のことは、正樹って呼びすてする。


でも……なんで?


「要するに……二股?」


「はい。そうなりますね。」


信じられない。信じられないけど。圭太の顔を見ている限り、嘘ではないきがする。まず、圭太の話を最後まで聞く事にした。


「最初、僕晴笑さんに、付き合ってる人がいるか、聞きましたよね。その時「正樹」といったので、驚きました。まさか、あの正樹ではないだろうか。そう思ってました。そしたら、やっぱり。あの「正樹」でした。」


「でも……正樹は、私に告白してきた。私からじゃなくて、あっちから。」


「晴笑さんに告白してきた理由は、きっと本人から聞いたほうが明確でしょう。でも、このまえ、橋場翼と正樹が喧嘩してましたよね。」


「ああ。あの、運動会の前の日?」


「はい。そのとき橋場翼は、かなりキレてました。橋場翼も、このことを知ってたんだと思います。」


「え。じゃあ。このことを知らないのって、私だけ?圭太も翼も知ってたの?」


「はい。」


なんで、私に教えてくれなかったの?彼女なのに。普通だったら一番に教えてくれるはずでしょ?っていうか、なんで二股なんて……。信じられない。信じたくない。



だって、信じてしまったら、今までの言葉や優しさが嘘になってしまうから。




「最後に…聞いてもいい?」


私は、震える声で圭太を見た。



「本当なの?」


ガシャン!勢いよくなにかが落ちた音がした。たぶん、運動会の用具が落ちたのだろう。でも、私にはそんな音全然聞こえないくらい気持ちが込みあがっていた。



圭太は目を閉じて、ゆっくりとうなずく。



現実はいつも……私に冷たい。