8時0分

マンションから歩いて30分のところに私の通う学校はある。
始業は8時30分。
私はこの30分間を毎日図書館で過ごす。
家にいても何もすることがない。
毎日静かにここで本を読むのが私の日課。
女子たちには大人ぶってると余計嫌われた。

8時25分

始業のチャイムが鳴る5分前に教室に戻る。
いつもの本にいつものしおりを挟んで本棚に戻す。

図書室から教室までのいつもの廊下。
あそこの角を曲がればすぐに私の教室。

ドンッ!

「痛っ…。」

向こうから角を曲がってきた人とぶつかり、鼻を思いっきりぶつけてしまった。

「大丈夫??」

私は鼻を押さえながら心配する声の方へ向いてみる。

そこには長身で茶髪のかっこいい系男子がいた。

「おーい、大丈夫かー?」

つい、そのかっこよさに見とれてしまい私の思考は少し停止していた。

「あ、大丈夫です…。」

「大丈夫ならよかった。急がないとチャイム鳴るよ?…結南ちゃん。」

「え?」

確かに彼は去り際に私の名前を呼んだ。

キーンコーンカーンコーン――――――――――――

8時30分

いつもなら教室にいる時間。
私はいつもと違ってまだ廊下にいた。