これと言って対した会話なんてしなくてさ、

唯一話したことは中間テストの数学のケアレスミスの多さだったり、

学級委員への仕事だったり……

事務的なことなっかりだったけど、先生と並んで歩く帰り道はなんだかいつもの帰り道と違って見えて、駅に着くまでがすっごく短いって感じたんだ。




でも、そんな先生の一面をみんなに言いたくなくて、あたしだけが知ってる先生にしたくて誰にもあの時のことは言わないの。


あの時交わした会話はあたしと先生の中で生き続けるんだ。






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「まっ、とにかく先生は最高の先生なのよ」


あたしは、つまらなさそうに雑誌を読むやっちゃんに声をかけた。




「全然理解できない」


「あたしだけ理解できればいいの」

なんていってみる。




「ふ〜ん」

あらっ、やっちゃん拗ねちゃった。




「そろそろ、先生もご飯食べ終わる時間じゃない?」


時計を見ると確かにいい頃合いだ。


「ほんとだぁー♪先生にまた会える☆」



鏡を見て、2つに束ねた髪をさっとなでる。


それから桃のリップを軽くぬった。