「しっかりしてよぉ~?発表大丈夫なの?緊張してない?」

「デカいオペより全然マシ」

「…そう言うと思ったよ」


私は苦笑い。

医者っぽい一面を垣間見せる夫の背中を見送って、空ちゃんと帰ろうとすると、感じる視線。


「“あしたばゆずき”ちゃん?」


きっと胸部心臓外科医なのだろう。

一人の男性がこちらへ歩み寄る。

見覚えのある長い指。

エレベーターのボタンを押した、あの手。