「人が人を好きになるってことは奇跡的なことだと、俺は思っているんです。」
「…………。」
「何を怖がっているのかは分かりませんが、アナタはきっと…」
「?」
「本当の愛をまだ知らない。」


本当の愛………。


「それはどんなもの?」
「口で言っても伝わりません。心で感じるものですから。」



彼が僕の身体を抱き寄せる。


力強く、だけど優しく……。


胸が熱くなる。


「本当の愛を知ってみたい。」


おずおずと彼の背に腕を回す。


「いいですよ。俺がいくらでも教えてあげましょう。だから――愛しいアナタの名前を教えてください。」
「……僕は、」




愛情なんて語るほど持っちゃいない。



だって僕は、これから愛を知るのだから。




――END――