目を閉じると当然のように唇が塞がれる。


彼の手が僕の頬を撫で、徐々に下へ移動する。

そう、いつもなら。


なのに、彼の手は僕の頬から離れない。



「……………。」



無言で彼は僕を見つめた。



「なに?」
「名前……教えてもらえませんか?」



その言葉に僕は顔をしかめた。


「最初に言った。名前も言葉もいらないって。」
「どうしてですか?」
「――情が移る。」
「それは悪いことですか?」



情は人を喜ばせ、そして………傷つける。


特に愛情は――。



「僕は欲しくない。」