金曜の夜。

僕は決まって“Tenderness”というバーへ行く。


カウンター右端が僕の定位置。


確かな約束がある訳じゃない。


けれど彼は来る。



僕から遅れて10分。


ほら、やっぱり。



彼は少し息を切らして、バーへやってきた。



薄暗いバーの中、彼は迷うことなく僕の所へ歩み寄り、隣に腰掛けた。



「すみません。待たせしてしまって…」


約束していた訳じゃないんだから、謝らなくてもいいのに。


「別に待ってた訳じゃない。」


僕は立ち上がり、出口へと向かう。


「もう帰るんですか?」
「このまま帰っていいのか?」


僕の言葉に彼は少し笑いながら、後をついてきた。