「子どもの寝顔って見飽きないわね」


「うん 寝顔は俺の小さい頃そのまんまだってお袋が言ってた」


「そうなのよ お義母さんに要の小さい頃の写真を見せてもらったら 

リンちゃんと同じ顔なんだもん 笑っちゃったわぁ」


「女の子なのに こんなに眉毛がくっきりで可哀想だな……」


「大丈夫よ 女の子はそのうち化粧をしたり 眉を整えたりするんだから」 


「そうなったらまた心配だよ 可愛すぎるのもなぁ 悪い虫が寄ってくる」



鈴が生まれてからベッドではなく 和室に布団を敷いて寝ていた

俺達の布団の間に鈴を寝かせる 川の字ってやつだ

こうすると夜中の授乳も楽らしく 多少むずがったくらいだと 

トントンと子どものお腹に手をおくだけで泣き止んでくれた



「はは……要はどうしてもそんな想像しか出来ないのね 

娘ってそんなに可愛い?」


「可愛いさ 円華は可愛くないの?」


「可愛いけど 同性だし男親とはちょっと違うかもね 

男の子だったらそう思うかも」


「もう一人欲しいねぇ おくさま どうでしょう」


「どうでしょうって それは私だって欲しいけど……

そんなに上手くはいかないわよ

続けて女の子が生まれるかもしれないのよ」


「それでもいいじゃないか こんな可愛いのが二匹いたら もっと楽しいよ」


「やだ 二匹って 動物じゃないのよ」



普段の会話は鈴の話題が多く 二人だけで出かけることもなくなったが 

それはそれで充実していた

手招きした俺に ちょっと微笑んで素直に俺のそばにやってきた女房は 

今 すっぽりと懐に収まっている



「このおっぱい いつになったら俺のところに返ってくるのかなぁ」


「えっ? おっぱいって要のものだったの?」


「そうだよ 今はリンに貸してるけどね 今夜はちょっと返してもらおうかな」



母乳を与える胸は大きく 手に余りそうなほどだ

家では 誰ばかることなく胸をはだけ 子どもに授乳する姿に 

母親のたくましさを見る

懐に抱き寄せた円華の胸をなぞると 妊娠以前とは異なり 固く張り切った肌は

血管が浮き出している



「鈴が生まれたとき担当してくれた看護師さんが 

『お父さん ママのおっぱいを当分借りますね!』 って俺に言ったんだ

だから そうか 俺のものなんだと思ってた」



おっぱいを借りるって 面白いわぁ あはは…… と 円華が身をよじって笑う

笑い続ける円華をギュッと抱きしめた