まぁいいか こんなに大事にしてくれるんだ ありがたいと思わなきゃ……
家に帰れば思う存分娘と一緒にいられるしな
そう思っていたのに 俺の思惑は見事に外れた
お宮参りが済み 自宅に帰って来ても
「今度はいつ来るんだ? すずちゃんを連れて来いよ
何? 今週は来れないのか? じゃぁ顔を見に行く」
こんな調子で お義父さんは しょっちゅう我が家にもやって来た
当面の俺のライバルはお義父さんだ
そういえば お宮参りで誰が抱くかでもめた
「俺が抱きますから」
「いや すずちゃんは俺が抱くんだ」
そんな俺達を見て 広川のお義母さんが笑ってこう言った
「お宮参りはね 赤ちゃんのお父さんの方のおばあちゃんが抱くことに
決まってるのよ 二人とも残念だったわね」
お義父さんの腕から鈴を抱き取ると 俺のお袋に渡した
始終満足げなお袋に比べ 仏頂面のお義父さんはそれでもブツブツと
言い続け しまいには円華に怒られたっけ
去年暮れに円華の妊娠がわかり 夏過ぎに鈴が生まれ
子どもの成長に追われ 今年はあっという間に過ぎていった
年が明け 鈴の寝返りが始まった頃 俺は一ヶ月間の育児休暇に入った
俺としては 円華の産休後 交代で休暇に入るつもりだったのだが
玲子さんの一言で 一緒に育児をしてみるのも面白いと思った
”赤ちゃんって生後半年くらいが面白いのよ
母親だけが知ってるのってもったいない気がするわ”
なるほど そうか それもいいかもしれない
会社の後輩に 先に育児休暇を取得したヤツがいた
まだ若い彼は 奥さんの出産後一ヶ月休暇を取り 一緒に子どもの成長を
見たのだそうだ
”工藤さん 子どもの成長ってすごいですよ
休暇 ぜったい取った方がいいですよ”
こう力説するのだ
そうか これは成長を見ない手はないな よしっ と気合が入った



