土曜日の昼下がり、水道橋。
新しくできた駅ビルのカフェで同じクラスの百合がおもむろに口を開いた。


「花梨、この後って特に用事ないよね?」

使い終わった数学のノート、新しいピアス、寒くなってきたからカーディガン。

指折り数えてから百合を見なおし、頷く。

「買いたいもの買っちゃったし…あ、このまま映画でも見る?」

そういえば観たい映画あったなあ、とふと思い出す。
黒髪長身イケメン俳優主演のミステリー。
たしかシリーズもので、今回が一作目だったから…と考えていると、百合が私を指差して口を開く。


「もーー!また映画!だから恋もできないの。映画なんて平面でしょ!?映像でしょ?たかが映像っ!」


「たかが映像…って。まあ映像だけどさ。そんなムキにならなくても…」

「ムキになってなんかないもん!前に百合が紹介してあげた人もそっこーで振るし、もっと前に合コン誘ってもこないし、花梨は恋する気あるの!?ないの!?」

恋はしたい。

恋はしたい、けど。