ナクシタモノ

長い長い沈黙が彼らを支配した。

響くガサガサという物音が不自然で彼は口を開いた。

「俺、さっきリエに告られた」

「えーっウソ?」

笑いながら言い彼女はやはり彼を見ない。

「で、なんて返事したの?」

「ちゃんと断ったし」

少し声を荒げる彼に対して彼女はのんきに言った。

「へーそうなんだぁ」

まるで他人ごとのような彼女の態度に彼は怒りより悲しみがこみ上げて来た。

そんな彼の様子など気にもせず彼女は探し物をする。

這いつくばって見た先に小さく光るものがある。
丸い輪を描いたシルバーのもの。

彼に気づかれないように彼女はそれをポケットにしまう。

そしてまた探し物をしているかのように装う。