この基地には演習場がある。
何故ならここは機体開発の場も兼ねているからだ。
もちろん前線に向かう兵士も駐屯しているが。


クロウディアさんとの打ち合わせを済ませて、演習場に向かった。
もう美穂とカミンスキーさんは準備が整っている。
「おおお遅いよみ美里ー!わわ私達にお怖気づいたのかなーー!!」
明らかにテンパっている。
「そんなわけないでしょ!絶対に勝つから。」
私も美穂に対抗する。
「茶番はそこまで。始めるぞ。」
クロウディアさんの一括で演習が始まる。
「ルールはブリーフィングで話した通り。大破認定されたら動いちゃダメよ?」
「...そんなの当たり前」
カミンスキーさんが呟く。
「コマンドポストよりα各機、状況開始します。」私達の隊の専属オペレーターである谷川皐月の合図が各機のコクピットに鳴り響いた。
刹那、パラケルフィアからの機銃掃射が。
「ッ!」
間一髪で避けることができた。
今の攻撃は美穂だ。さっきまでとは想像もつかない。
「パラケルフィアじゃANSEMの機動には追いつけない!撹乱して挟み撃ち、一気に仕留めるよ!」
「了解!」
クロウディアさんの指示はいつも的確だ。
ANSEMの最大の特徴は機動力。それまでの主流であった四足歩行の兵器とは違い、二足歩行になった機体は、以前とは比べ物にならないほどの跳躍力や機動力を兼ねそなていた。
「ほらほら遅いよ!」
パラケルフィアからの掃射が迫る。
美穂の射撃の腕はかなりのものだ。パラケルフィアの最大機動で動き回りながらも的確にこちらに銃弾を浴びせかける。
「クソッ!なんで...!」
「落ち着きなさい美穂!そんな直線的に動いていたらただの的よ!」
クロウディアからの助言を元に、機体の移動をランダムにする。しかしまだパラケルフィアからの銃弾はやまない。
「キリがない!応戦します!」
こちらも負けじと反撃する。
しかしパラケルフィアはいとも簡単に避けた。元々パラケルフィアは地走兵器。
地上での移動はANSEMよりも上なのだ。
だが、ANSEMは立体的な機動ができる。
そこがパラケルフィアとの絶対的な"差"なのだ。
「全然駄目ね...見てなさい。私がお手本を見せてあげるわ」
クロウディアが千里に告げる。
「でも、美穂にいま近づくのは危険じゃ...」
semとの戦いには幾つかのセオリーがある。
まず1つは、安易に近づいては行けないことだ。
多くの犠牲を払い、鹵獲したsemを研究して発覚したこと。それはsemが液体物質だということだ。semは機体にとりつき、電子回路に侵入してコンピュータを制圧し、操ってしまうのだ。
安易に近く又は接触してしまうと、操られた機体からsemが侵食してくるのだ。
ANSEMにはある程度の侵食を防ぐ素材できている。しかし、美穂の様な集中砲火を食らっている時に近づいては、行動が制限されてしまいその間に接触されてはANSEMも乗っ取られてしまう可能性があるのだ。
「美穂じゃないわよ。ほらそこ、何かしようとしてるのは分かってるわよ?」
クロウディアが急降下した先には、カミンスキーの機体があった。美穂の集中砲火で注意を逸らし、その隙に攻撃しようという作戦だったようだ。