朝だ。

いつもと代わり映えのしない朝。

私が入隊してから、もう4年は経つのだろうか。
semによって汚染された空を見上げてふと感慨にふけっている。
その時、背後から声がした。
「おはよう千里!どうしたの〜?ぼーっとしちゃって。」
私と同じ小隊の同期。矢谷美穂だ。
いつも明るい、隊のムードメーカーだ。
「なんでもないよ。ただ、毎日変わらないなーって。」
「ふ〜ん。まあ別にいいんだけどね!」
小馬鹿にした様子で美穂は言う。
「どういう意味よ」
「別に深い意味はないよっ!それよりさ、今日何の日かわかってる?」
「わかってるわよ。対sem兵器の対人演習でしょ?」

私達は、前線で戦ってはいない。私達の小隊は、国連軍が開発中である対sem兵器のテスト部隊なのだ。
前線で戦えない事に苛立ちを覚える事もあるが、この兵器が完成すれば、扱いに最も慣れた部隊として前線に復帰できる。それまでの辛抱だ。


「ならよし!早く朝食すませようよ!」
「あんたはなんでいつもそんなに元気なの...」
「それがあたしの長店ですから!」
彼女はいつも笑っている。
その笑いが、どれだけ辛い物の上に成り立っているかを私は知っている。
だからこそ、彼女の心は私とは比べ物にならない位しっかりとしているのだ。


彼女の生まれは大分県だ。
彼女の惨劇は、semと国連軍との最初の戦闘があった日から、3ヶ月後に始まった。