美穂からの機銃掃射は止まない。弾倉交換時もレーザーで的確にこちらを射抜いてくる。彼女は本気なのだ。
ANSEMの開発を早めたいのであれば、わざと負ける等の方法はいくらでもある。
しかし、そんなことは小隊の誰もが望んでいなかった。semは人間の都合では動いてくれない。つまり常に本気なのだ。手を抜いて完成させたANSEM等、ただの動く人形でしかない。
より良い機体に仕上げるためにも、美穂やカミンスキーは本気で応戦しているのだ。
しかし、ここで負けて開発が遅くなれば、その分人々の命が散る。それもまた、望んでいない事実であった。
だから、負けられないのである。
「私が、負けると、開発が遅くなる...そうなれば、さらに多くの人が死ぬ...」
フットペダルを踏み込む。
ANSEMのスラスターが火を噴き出す。
「そんな事...」
ANSEMが舞う。
ビルを蹴り、華麗に、俊敏に。
「絶対に!」
パラケルフィアに接近する。
コクピットには衝突警報が鳴り響く。
「速い...!」
自慢の弾幕が突破された美穂は、慌ててクローを展開し、ANSEMに振りかざす。
「できない!」
一閃。









ANSEMが着地を終えた後には、クローと機銃を溶断され、コクピットが本体と切り離されたパラケルフィアが横たわっていた。


「矢谷機、大破と認定!状況終了!各機、開始位置に戻れ!」


対人演習は成功に終わった。

ANSEM完成まで、あと一歩である。