「あった、あった」

と、言いながらもう一度私の方を見て何かおでこにペタンと貼った。

触ってみると、カットバンを貼ってくれた。

「はい、できたっ!」

そう笑って私のバックを手に取り自分の自転車のカゴに入れて後ろを叩いた。

トントン…

「えっ…?」

私は訳が分からず問いかけた。
「乗って…」

って言われて、びっくりしてる私を見てまた

「早く乗って…」

と答えた。

私は、その優しい声、瞳につられ乗った。

「よしっ」

と言って、白い歯を見せて笑ったと同時にこぎ出した。

コキコキコキ…

ゆっくり、ゆっくりとこいでくれる。

さっきまであんなにとばしてたのに…。

そういえば名前、聞いてなかったな。

でも、運転してるし迷惑かな?
そうやって悩んでるといきなり

「俺、青園 翔(ショウ)」

え、私が言わなくても自分から言ってくれた。

あっ、私も言わなくちゃっ。

「私は…、 青空 にいな…です‥」

男の人とはあまりはなしたことないからぎこちなくなっちゃった。

私ってこんなときでもはきはきできない。

相手はちゃんと言ってくれてるのに。

私ってどんくさいな。

「にいなかーっ、かわいいなーっ、しかも青空。 俺も青って字が入ってる。 何か、うれしーな」

何て言いながら、ずっと笑ってる。

しかも、青がついてただけではしゃいでるしかわいいって‥。
子供みたい。

翔って言ったっけ?

翔こそそんなことでうれしーなんて翔こそかわいいよ。

私なんかより‥。

そんなこと思ってると翔がいきなり

「やっべ、遅刻しそーっ。 入学式早々遅刻とかありえねーし。 よしっ、とばすぞー」

と、笑いながら私に言った。

見ると、何か翔は輝いていた。
たいようのせいかもしれないけど私には輝いて見えたよ。

翔の後ろ姿‥。

私はその大きな背中にそっと手を回した。

「翔の背中‥、暖かいね…」

正直、最近人の“暖かさ”になんて触れてなかったな。

久しぶりの人の暖かさはすごく優しい暖かさだった。

「だろ? 俺が優しい男だからなーっ」

そうやって笑いながら答えた。
「うん。 だね‥」

私も笑いながら答えた。