ガタンゴトン、ガタンゴトン…

私は、電車に揺られながら窓に映る海を見ていた。

“まもなく、河原口前―――”


「あっ、降りなきゃ」

私は、なれた手つきでバック、花、そして翔(ショウ)が好きな手作りクッキーを持って電車を降りた。


コツコツコツ……


私は今、大切な人のとこへ向かってる…。

でも、決して嬉しいものでもない。

だって、行ったって君はもう目を開けないかもしれない。

もう、笑ってくれないかもしれない。

もう……

“にぃなーっ、だーいすき…”

って言う、君の声を聞けないかもしれない。

でも、こうなったのも私のせい――。

私のせいで大切な翔をこんな姿にしてしまった。

私がこうなればよかったのに…。

でも、後悔したって元に戻れるわけでもない。

だから今は――。

“奇跡”

を、信じる。

翔がまた、目を開けて

“おはよう、にぃなーっ”

って、言ってくれるかもしれない。

だから今、こうやって“奇跡”を待って翔に会いに行ってる。
また、ああやって笑い会える日が来るかもしれない。

一緒にデートしたり、手を繋いだり、キスしたり…。

私はそう信じたいから…。

今は、“奇跡”だけを信じたいから‥