「勇気、どうしたの?」


千尋が声かけてくれたのも、

気付かないぐらい、

ボクは釘付けだった。

ボクを動けなくさせたのは、

横の壁にあった一枚の写真だった。

海の写真だったけれど、

その色は深く深く、

碧くて翠色で、

ガラスのように美しく、

キラキラ輝く様は太陽のようで、

吸い込まれてしまうような、

溶け込みたくなるような、

そんな海の写真だった。


「すげえ。」


こんなにも感動しているのに、

出てきた言葉はあまりにも稚拙で。


「勇気。ほら、アイス溶けちゃうよ。」


千尋に声をかけられて、

やっと現実に戻ってくることができた。