「…ただいま」
藤堂くんと約束を交わし、玲と境井くんの今後を期待しながら、私は家の扉を開けた。
……誰もいないはずの玄関でそう呟く。
今日は色々な事があったなぁ。
玲が恋に目覚め、私も初めて好きという気持ちを知った。
熱くて、
苦しくて、
あったかい、恋を。
額に手を乗せる。
……………。
「お帰りなさい、亜紀」
え?
誰もいないはずの玄関に……誰かいた。
「に、兄さん?」
「そうですよ。わたしのそっくりさんはご近所にはいないはずですから」
「いやそういう事じゃなくて……」
にこり、と眼鏡越しに微笑む兄……小野崎浩司。
幼い時から私を娘のように可愛がってくれた兄は、オタマ片手にエプロン姿で玄関に立っていた。
