恋物語






◆ 小野崎 亜紀




教室に入ると、そこには重苦しい空気が充満していた。

いつもの痛いぐらいの視線がやってこない。
あれ、どうしたのかな。
空気は重いのに。




「………」


原因は、玲だ。

ギスギスした空気の原因は私の机に額を押しつけ、激しく貧乏ゆすりをしていた。
それはもう、床が突き抜けるんじゃないかという感じに。



「れ、玲」

躊躇しながらも、体を揺する。


「……………あ、亜紀!おかえり!」

「あ、はい。ただいま」


顔を上げた玲は、とてもいい笑顔を浮かべていた。

やっぱり怖い。

何があったのか、今までの経験でよくわかる。…朝と同じだ。


「……放っておけばいいんですよ。別にどうでもいいし」

「あたしが嫌だっ。……退学になったら亜紀が悲しむから、手は出さないでやったけど」


不吉な言葉に思わず零れる溜め息。
どうして彼女は、私の悪口なんかでこんなにも怒ってくれるのだろうか。


「……ありがと、玲」

「どういたしまして!」


にかっと輝いた玲の笑顔は、太陽のように弾けていた。