秀side

安西…。安西なんか嫌いだ。あんなに怒らなくてもと思う。安西が帰った頃、沈み変える空気。俺と中里、2人向かい合って立ち止まる。すると中里が口を開く。
「…さっき2人で何話してたの?」
「お前には関係ねぇ。」
俺は外を眺める。
「…気になる。」
そんな可愛いく言われたら…⁉俺は今何を思った?今の自分がおかしい。中里と話しているのに安西の事で頭がいっぱい…。
「っ。ケンカしただけ。」
「ほんと?」
「っああ。」
「なら良かった!」
良かった??どういう事だろ。中里がにっこり笑う。しかしその笑顔は一瞬で消えた。なんというか真面目な顔になった。
「あのさ…秀くん。無理なお願いかもしれないけど…」
中里の顔が真っ赤になる。そして、
「もしよければ、付き合って下さい!」
…へー?付き合って…って事は俺の事が好きって事か?

…静まり返る屋上。響いた彼女の声。

「あのっ。返事は…?」
そう言われて俺の出した答えは、
「ああっもちろん。」
だった。
「もちろんって、その、えと。OKって事?」
彼女は不安そうに聞く。
「おうっ。あ、言っておくけど、俺エロいから。」
「な、なにされてもいい!」
「OKー。」
俺は中里と付き合うことにした。中里の事が好きな中岡には悪いが…今、俺は失恋してんだ。中里も結構可愛いし優しいから…俺は中里を一生大切にする。中里を離さない。そして安西の事は忘れる。もう、ただの他人だ。俺には関係ない。女友達の存在として…。安西を忘れる事にした。そして、次の日、俺はデートを約束した。初デート。幸せだった。しかし…俺の心の隅で悲しんでる、落ち込んでいる、安西の姿があったのだった。俺はそれをただ単に見つめるしか出来なかった。次の日もその次の日も、俺にはそのモヤモヤした気持ちが少し残っていた。
「秀くん…最近元気ないね?」
中里が話しかけて来た。
「…そうか?元気だぜ?」
中里は黙る。そして、
「…安西瑞希。」
「へ?」
「瑞希の事、好きなんだよね?まだ、気にしてるんだよね?」
中里の言葉が俺の胸に突き刺さる。なんだろうこの感じ。…何て言い返せばいいのだろう。
「秀くん…。その、反応は、やっぱり好きなんだね?この前、デートした時だって楽しそうじゃなかったもん。」
「…そう、かもな。好きではねーが、何かあいつの事、無意識に考えてるんだ…」
すると中里の目つきは変わった。
「秀くん!私、諦めない!秀くん私の事ちゃんと好きになってくれるまで、頑張るよ!この前…言ったでしょ?何されてもいいって。好きだから。だからっ…一生別れないからね!」
そう言い残すと中里は去っていった。
俺はどーしたらいいんだ…。悩むばかりだった。







瑞希side

あの日、1人になって落ち着けた私。今は渚にあやまって、佳菜美と三人で話している。小倉とも口聞かなくなったし…私にはこれが1番なのかもしれない…っと思ったある日の事である。私は久留美ちゃんに呼び出された。
「な、何か…?」
私は恐る恐る聞く。
「えと…瑞希だよねっ。瑞希ってさ小倉くんの事好き?」
え?何を言い出すと思ったらそれ?
「…っべつに。なんとも思ってないし。」
「そう。ならイイわ。」
ならイイ?どういう事⁉
「最近浮気されそうで怖くって。」
浮気…?久留美ちゃんは何を話しているのか分からない。
「久留美ちゃん…どういう事?何があったの?急にどうしたの?」
久留美ちゃんらしくない。久留美ちゃんっておしとやかで優しいイメージが強かったけど…本当は違う?上から目線で何を言われるか怖くなる。
「たぶん、言ったら…あなた傷ついちゃうわよ?」
私が傷つく?ますます意味が分からない。
「しょうがない。言うわ。驚かないでよ?私…秀くん…小倉秀くんと付き合っているのよ。」
私は呆然とした。心臓が爆発するかもと思うぐらい。ビックリした。
「その感じは…瑞希、秀くんの事好きね?」
「ははっ。笑わせないでよ。嘘言わないで?からかわらないでくれる?」
そう。嘘だよ。小倉が言ってたもんね。きっと久留美ちゃんも嘘ついてる。
そう言ったものの、実は嫉妬してたり心の中で死んでたり。しかも、秀くんって何?
そっか…ほんとに付き合ってるんだ…。やばっ。また涙が出て来そう。私っていつもそう。でもここで泣いたら久留美ちゃんになんか言われるし、またからかわれるよ…どうしよ。
「そんなわけない!」
私は思いっきり叫んだ。
「そんな強気で、いいのかしら?直接聞いてみなさいよ。秀くんに。本当よ?まぁ、あなたは秀くんに話しかけられないようだし?私は、秀くん狙ってるの。取らないでくれる?」
涙を堪える私。私を睨む久留美ちゃん…。
「そういう事だからっ。」
久留美ちゃんはそう言い残したら帰っていった。呆然とした私。あとからどっと涙が溢れて来た。いつもより多くて。ダメージが強すぎて…私には耐えられなかったんだ。

次の日…

私は思い切って小倉に聞いた。
「小倉っ。中里と付き合ってるって本当なの?」
っ!普通に話せた!良かった…。
でも、久しぶりにしゃべって言う事それ?って思うかもしれない…。だけど今はそれがすごく知りたかった。小倉はちゃんと答えてくれる。
「っ。何でだよ?」
「色々噂になってる…から…」
少し落ちこぼれた感じで言うと小倉は
「…そうだよ?噂になってるとは思わなかったなぁ。やっぱり有名?」
キレタ。軽い感じでさりげなく、言った小倉が憎かった。私は去った。変な感じに思われたかもしれない。だけど今の私には耐えられない。

ー小倉が付き合っているー

頭から離れない。何度も頭を横切る。デートは?手は繋いだ?キスはした?聞きたい事、沢山あった…。だけど…久留美ちゃんの言うとおり付き合ってるのは確かだ。心が痛んだ。とっさに走って逃げた場所は屋上。ここにいるとなんだか心が落ち着く。
「瑞希ちゃん?」
「瑞希やん!」
聞き覚えのある声。ふと後ろを振り返ると、そこには渚と佳菜美。
「どうしたんや?瑞希!泣きそうな顔してんで?」
「瑞希ちゃんっ。何かあった?」
心配そうに見つめる2人。私が迷惑掛けてるのかも。
「大丈夫!2人とも、心配しないで?私は平気!大丈夫だよ!」
私は思いっきりの笑顔を見せた。しかし…渚に、
「瑞希ちゃん…作り笑いは、らしくない…。やっぱ何かあったんだ…言ってみな?…迷惑なんかじゃないから…」
優しすぎる2人に私は全て話した。帰ってきた答えは…
「そっか…まずは小倉くんと話すべきだね。」
「そやな。行動に移すんや!中里なんかに負けへんで?」
だった。そ、うか、そうだよね…。ちゃんと話さなくちゃ。あの時、途中で逃げた私が悪いんだし…。聞いてみようかな…。私は心の中で決心した。話しかける。と…。
「渚!佳菜美!私、頑張るよ!話してくるよ!」
そう言って私は駆け出した。小倉の元へと。
「瑞希ちゃんのっ本物の笑顔が私は好きー!」
「うちもや!本物の笑顔見せてや!」
2人とも。泣けてくるじゃんか。2人に背中を押してもらったことで私は一つ勇気が溢れて来たのだった。