秀side

俺は中岡のいる保健室に向かった。
ガラッ。
「中岡ー!いる?」
「ここここー!」
ベッドの方から聞こえる。見ると顔を真っ赤にして寝ていた。
「お前!顔真っ赤!大丈夫か⁉」
「おう!熱はねーぜ。あいつに惚れてしまったのかな。あの可愛い笑顔に。」
ハハ…。俺もあいつ、可愛いと思う。
「好きになった。でも告らねーぜ?」
「何でだよ。」
「あいつ、性格悪そうだから。」
「どういうことだよ?」
俺は頭が狂う。
「さっき、聞いちゃったんだよ。他の男子の会話聞いちまったんだよ。
あの女可愛いから告ったんだ。そしたらふられた。はぁ?あんたなんか嫌!もっとイケメンがいい!調子乗ってコクんな!馬鹿野郎!って言ってた。」
あの子が。そんな事を?まさかっ。
「中岡…。そんなの噂。デマかもしれないぜ?あの後あいつと話した…。普通だよ?…お前やっぱ熱あんじゃねー?」
そう言って俺は出て行った。今、俺はイラついてる。中岡の話しに対してムカついてる。
どん!
ぶつかった?いてっ。
「っ!安西⁉」
「え?」
安西はビックリした顔をしている。
「あっ。ごめんね。ごめん。」
安西が過ぎようとした時俺は動いた。そして安西の腕をつかんだ。
「な、なに?」
安西は嫌がった顔…?やっぱ…。
「あっ、あのさ。」
話しかけてくれてる?
「あの…、さっきの可愛い子と付き合ってるの?」
「へ?」
何を言い出すと思ったら、それ?しかも、なぜ安西が?
「安西?」
「あっ。ごめんね。見るつもりは無かったんだけど…。今日2人で話してたから…そうかなーって。」
はじめてはなしてそれかよ。俺の片想いが無駄に…。
「んまぁな?付き合ってるぜ?」
俺は安西に意地悪をしてみた。
「ゃっぱり…」
「今日会って今日告白されちまってよー。俺ってもてもっ…」
俺が言い終わるまでに安西は帰って行った。泣きそうな顔で、目が赤かったような…。気のせいか?





瑞希side

私は小倉から少し離れたところで、止まる。あれ。何で泣いてるの?そっか…小倉に彼女が出来たからか…。またまた嫉妬。何で嫉妬?そっか…私っ、小倉の事好きなんだぁ。もっともっと涙が溢れる。どうしよっ。涙が止まらないよ…渚。助けてよ…佳菜美っ。
「ぅうっ!」
廊下の真ん中で泣く私。恥ずかしい。
「あれれ?君どうしたの?」
え?後ろの方から声がする。振り向くと、背が高くて…優しそうな目、優しく私に微笑む。この人、見たことない。きっと先輩だ。
「あっ。何でもないんで…さようなら!」
「待ってよ!相談にのるよ?」
「いいです!さよう…」
先輩は私の手を強引に引っ張る。
「やめてください!」
なんかこの人怖い!やだ!誰か!助けて!助けてよ!
「離してあげてください!嫌がってるじゃないですか?」
可愛いくて優しくてかっこいい声…?
間の前には秀と話していた可愛い女の子。
「そこの君もおいでよ。」
「嫌です!今、先生呼んだのでもうすぐ来ますよ?」
「ちっ。」
その先輩は私の腕を離して帰って行った。そしてその子は、優しく、
「大丈夫?」
声をかけてくれた。
「はい…」
小倉ってこんな子がタイプだったんだ。
「あの…名前は?」
「安西…瑞希です!」
「安西瑞希っか…。覚えとくね!じゃ!私はこれで!」
「あ!待って!」
私は帰ろうとする女の子を引き止める。
「名前教えてください。」
「あっ。私は…中里久留美!よろしく」
くるみかぁ。
「じゃあね!瑞希ちゃん!」
「う、ん。」
私は曖昧に返事をした…。小倉の彼女の名前、久留美ちゃん。覚えた。私はため息をつきながらそっと立ち上がる。
「教室もどろ。」
体が重くて…あまり動かない。暗い気持ちで教室にはいる。なんだか、気まずい。小倉がいるから…。小倉と久留美ちゃん…。その言葉が何回も頭が横切る。告ったのはどっちだろ。どんっ!いたっ。
また誰かとぶつかった…?本当。最悪。
「あー。ごめん大丈夫?」
「はい…。」
「あ!君って!確か…確か…小倉の初恋の人だよね?小倉に聞いたんだ~。そう!安西さんだ!あっちなみに俺は中岡!よろしく!」
え?え?え?え?次々と疑問が湧いて来る。私が小倉の初恋の相手だと…?でも…そんな事どうでもいい。
「えと…。中岡くん。小倉って付き合ってるんだよね?」
中岡は目を丸くしている。あれ?ちがった?
「小倉が?誰と?」
「えっと。久留美ちゃん…」
「ええええー⁉⁉ソーなの?それ、本当?安西さん!」
「…う、ん。自分から言ってた…。」
中岡はまだ目を丸くする…。
「嘘…だろ。ちょっと聞いて来る!」
え?あっ!……噂になってるんじゃ無かったの?今の状況が読めない。するとそこに、渚が来た。
「瑞希ちゃん…!どお?話しかけた?」
「話しかけたどころか話しかけられたよ。」
「え?本当⁉良かったじゃん!っでどんな会話?」
「…小倉に、彼女…が…いるって事。かなぁぁ。ぐすん。」
私は涙を堪えた。
「ええ!?小倉くんに?彼女⁈」
「うん…だってね。自分から言ってたんだもん!グスン…俺、中里と付き合ってるってぇ。ぅうっ!」
もう。涙なんか堪えられない。次から次へと出てくる涙。
「ちょっ!落ちついて?」
「落ちつけない!しかも、自慢げにぃ!もうっ。私。」
私が今、見えるのは渚の困った顔だけで後は…何にもない。
「わかった!分かったから落ちつこ!私が悪かった。ごめん。!」
っと、そこに…小倉が。私の腕をつかんだ。
「何で泣いてるのか知らねーけど…こいつ借りるから。」
前には小倉が、後ろを振り返ると、渚が。もう。どうなっているのか、わからない。頭が真っ白で…どうしていいか…今の私には無理。小倉は小屋上へと向かう。屋上で一体何をするの?飛んだ展開になってしまった。すると、小倉が叫ぶ。
「ったく。変な噂流すな!嘘だって分かれよ!」
っは?何の事?
「俺が付き合ってるって事。嘘だから、ただからかっただけ。っそんな事でいちいち信じんな?てか…ごめん。」
っはは。嘘だって、嘘…。私にとってそれは嬉しいはず。なのに…何だか今の私は怒ってる…?
「馬鹿野郎!」
私は続ける。
「何なの?私に、嘘ついたの?何で?はじめて話した人に言う事?…あっあたしは小倉を信じなきゃいいの?はじめて話して、その人の言う事信じないとか、ないよ?そりゃー信じるよ。」
「…」
小倉はア然としている。私でも今、何て言ったのか、分からない。頭がカーっとなって、ただ単にあいつの事想ってただけだから…。しんとする空間。
「っ。泣くな。お前の言う通りだっ。俺だってお前の事。信じてた。ずっと前から…お前を好きになった…頃からずっと。」
ーーへ?
バンッ‼
屋上のドアを開ける音。そこを見ると久留美ちゃんが。久留美ちゃんは、
「あっ、あたしお邪魔?失礼しま、」
「いーの‼」
帰ろうとする久留美ちゃんを引き止める。もう、ここにいるのが辛くて…。
「じゃーね。久留美ちゃんっ。」
っタタ。
私は駆け出した。世にも思えない事が起きた…?今、ほんの一瞬だったけど聞こえた。お前を好きになった…って。気のせいかもしれない。私の頭がおかしかっただけかもしれない。…だけど、確かにそう聞こえたんだ。小倉と久留美ちゃん、今、何を話しているのはしらない。もしかしたら、告白かもしれない。だけど。もう…。
「瑞希ちゃん…!やっと居た。探したんだよ?あの後どうなったか心配でぇ…」
渚が、息を切らしながらこっちを見る。
「…ごめん。今は1人になりたい。」
そう言って、家に帰ろうとした時、無理やり私の手を引っ張る渚。
「瑞希ちゃん…!心配なの!私が困るの!お願い!話して!」
「やめてって言ってるでしょ⁉わかんないの‼⁇もう…さ、付きまとうのやめてくれる?うんざり。私が何だろうがあんたには関係ない。」
私…今ひどいこと言った?渚傷ついてる?でも、ごめん。本当に辛いから。ごめんね。渚…。私はスタスタ歩く。渚は呆然としている。1人で立ち止まっている。優しすぎなんだよ。渚。私、いろんな人に出会って、助けてもらって…小倉と話せなかった私が話せたと言う事…それは渚のためでもあるからね。それと…出会った人のお陰。