瑞希side

次の日

ガッ!
「や、めて。」
「許さない!絶対に許さないよ!美姫はあんたが大嫌い!」
そうして私を壁に叩きつける美姫ちゃん。
「やめてよ。苦しい…。」
「はははっ!もっと苦しめぇ!そして秀から離れろ!」
「やだ…絶対に。」
私は踏ん張った。頑張った。
かつかつ。
廊下を歩く音。誰!?誰でもいい。助けて!すると先生の声が。
「‼」
「っち。今日はここまで。っまぁもう6時だから早くかえりな。で、また明日もおいで…?苦しめてあげるぅ。」

はぁ。
教室に1人でため息をつく。明日もこんな…?今日は秀が部活の大会。一日いなかった。明日は会えるかな?とぼとぼと門を出て帰る私。その通りには…ベンチに座っている…他校の人!…名前は、確か井上!逃げなきゃ!その時、私には見えた。井上の涙の雫がおちる所を。泣いているのだろうか?私は泣いている人なんかほっておけない性格だ。自分の足が勝手に動く。いつの間にかベンチに来ていた。
「っあのぉ。大丈夫ですか?」
「?あ、君はあの子だよね。この前はごめんなさい。つい…」
え?あやまった?何か意外…。
「いえ…。あの…どうしたんですか?」
「…相談に乗ってくれるのか?ははっ。優しいね。じゃ。遠慮なく。」
私は頷く。そして隣へ座る。
「俺には好きな奴がいる。そいつは他校で俺の幼馴染。いつも一緒で…。でも高校になってから、あいつは変わった。急に意地悪になって…。」
あっ。あの先輩と同じ。自殺した先輩と…。
「で…俺はどうでも良くなったみたいだ。他に男が出来たから…家来になれ…とかよ。命令ばかり。あいつにとって…俺はいらない存在。」
「…あの。話の途中すいません。好きな人って…美姫ちゃん…?」
「‼なんでわかったんだ?正解だよっ。そう…美姫さ。本当は優しかったんだよ。あれでもね。しかも中学の時だって俺と美姫は付き合う寸前までいった。でも…今は…。違う。俺なんかどうでもいいんだ。俺と美姫は別の世界。だから存在すらなぃの…」
「違いますよ!絶対に違う‼あなたたちはまだ…愛し合っているんじゃないですか?付き合いたいんじゃないですか?まだ…いけますよ。」
「俺はね。付き合いたいよ。でも向こうは…」
「…大丈夫です!昨日の事覚えていますか?裏庭での事…。あの時美姫ちゃん凄い笑顔で楽しそうでした!それに…美姫ちゃんがあなたを家来だとか…そういうのに使っているのなら…美姫ちゃんはあなたを頼りにしています!まだ想っています!」
「…」
井上は呆然としている。
「…どうして?どうして君にそんな事がわかるの⁇俺の心でも読めるというのか?」
「いいえっ。長年の経験ですよ!私だって7年間、片思いし続けました。だから…いまは勇気が持てます!あなたも!頑張って下さい!」
そうだよ。美姫ちゃんだってまだあなたの事を想っているはず。だから…勇気持って。一緒に頑張ればいいんだ。同じ立場からのスタートだよ。
「…っありがとう。君はすごいね。こんなに勇気があるなんて…すごいよ‼対したもんだ…。俺もそんな風になれたらな。」
「ならせるんです!待つだけじゃなくて…自分から行動してください!」
「…」
泣いている井上。井上ってこんな優しかった?何だか私も泣けてくるよ。
「…そーだ!明日…告ってくださいよ!」
「‼なにいってんだ⁉無理に決まってる…!まだ…はやいよ。」
「…とにかく。頑張ってください!私も告ります!7年間想い続けていたって…。」
そうして私は去った…。私は考えたんだ…。あなたの為に何が出来るのかって事を…。




今日も秀と登校中。
「…瑞希?何かいい事でもあったか?」
「へ?ないけど…どして?」
「何か…機嫌いいなって…」
…まぁね。今日が楽しみだからね。
「…そぅだ!あのさっ。今日…6時にあそこの美味しーレストラン行かない!?」
「お!いーね!俺も行きたかったんだよなぁー。」
「…それと話があるから…」
「俺も♪」
「…へ?」
話…?秀も?私は告る予定だけど…秀は…?何だろう。
「ついでなんだけど…南校もよるね。」
「?お、おう。」

南校

「…瑞希?どうした?こんなとこで立ち止まって…。てか、誰もいねーし!」
「し!静かに!隠れて!」
そう言って草むらに隠れた。
「え?」
すると…
「あれって鹿島と井上じゃね?」
2人が来た…。
「そうだよ。」
耳を済ませると2人の会話が聞こえてくる。

「…京ちゃん!どした?」
「…話があるんだ。」
「話ぃ?いーよ。何?」
「…落ち着いて聞いてくれ。そのな。ここへ来たのはわけがあって…その…あの…えっと…実はな…そのー」
「ぷっ。笑っちゃーうっ。京ちゃんってさ、緊張するといつもそうなるよね?そうそう!中学の時も!…何だか……懐かしいー。」
「え…。美姫…。俺さ!俺…お前の事が好き!ずっと前から…中学の時から!幼馴染で、いつも一緒だった。小学校の時はあんま意識してなかったけど、今は好きだよ。めっちゃ…」
「う、ぅう。ぐすんっ。」
「え!?美姫‼何でなく⁉」
「ご、ごめんね。京ちゃん…本当に…ごめん。嬉しいのと悔しいのと…混ざっちゃって。実は私もなの。京ちゃんと全く同じ。でもね…高校になってから私…秀に一目惚れ…京ちゃんとも高校離れちゃったからもう…いーかなってぇ。でも…違った。今日瑞希に言われてからようやく分かったよ…。私の好きな人は…京ちゃんだって。」
「…美姫…。…って事はもしかして…?」
「美姫もぉ!好き!大好き!ずっと前から…京ちゃんよりも前からぁっ。」
「美姫…付き合ってくれるか。」
「もちろんだよ!あり…が、とお。」
「…ぁあ。」

美姫ちゃん…井上…。おめでとう。
「…瑞希?まさか…お前。」
「…うん。気づいてた。2人が両想いだってことを。」
うん。知ってたよ。本当よかったね。
幼馴染で…付き合えて。憧れるよ。それに井上…よく言えたよね。頑張ったじゃん。
「…瑞希っ。俺らもあいつらなんかに負けてなんかいねーぜ?」
「へ?」
「いくぞ‼あの…うめーレストランに…。」
「うん…行こか…」
私も…言うんだ…勇気出して…私だって井上に負けてられない!私だって…言ってやるよ?7年間…片思いしてたってね。