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これが今に至るまでの経緯です。
え?説明足りないですか?私も説明が足りません。どうにかしてください、この俺様副社長代理さまを!
涙ちょちょぎれる私を笑うかのように車は目的地に到着したようで、ホテルのエントランスに直停めされた。
とにかく降りよう。
ため息を一つ心の中で吐くと同時に、私側のドアが開く。
「姫、着きましたよ
行きましょう?」
人の気も知らずにイケメンを存分に使い切った笑顔が、このシゴトで疲れ切った目に刺激を送る。
まぶしいっ!
何、この破壊力半端ないんですけど!
車から足を下すと手を取られてエスコートされる。
…もうだれかこのひとなんとかして。だれでもいいからナイスバディな美女さまとかめくるめく夜のお誘いでもしてくれないかな、ほんとに。
恥ずかしすぎるこの状況を打開しようと試みるも、なんともならずに諦めモード。
ふと気づくと近い距離。
間近で見るスーツをまとった背中は
とてもたくましくて、かっこよくて
心臓が高鳴る。
あぁ、まだこんなに気持ちが残っていたなんて
気づきたくなかった。
瞳を伏せてほんのり赤く頬を染めて
困り顔の女性を
上から彼が盗み見て柔らかく笑っていることは
彼女はまだ知らない。



