あれ以来、初めて、光希からの電話が鳴った。

透子は飛び付くように通話ボタンを押した。



「光希!」


だが、電話口の向こうの空気は重い。



「透子。大事なことを言うよ。ちゃんと聞いてね」


光希はゆっくりと言葉を紡ぐ。

透子は何事なのかと身構えた。



「しばらく会えないと思う。連絡もできない」

「……どういうこと?」

「詳しいことは言えない。でも、とにかく、そういうことだから」


言い捨てるように電話を切ろうとする光希。



「ちょっと待ってよ!」


透子は困惑の中で声を上げた。

何が何だかわからなかった。



「そんなの、納得できない! わけがわからない! ちゃんと説明してよ!」


悲痛に言う透子。

しかし、電話口の向こうは沈黙したままで。



「光希、私のことが嫌いになった? もういらない? 光希まで私を捨てるの?」

「違うよ。そうじゃない」

「なら、どうしてよ! 落ち着いたら一緒に暮らすって約束したじゃない! 私がマナミのことを頼んだから? 私が我が儘を言ったから?!」


透子はパニックに陥っていた。



光希にまで捨てられたら生きてはいけない。

私にはもう光希しかいないのに。


声は、次第に涙混じりになっていく。