水面に浮かぶ月

「どういう意味?」


透子は怪訝に問い返した。

光希はため息混じりに言う。



「『promise』を任せているシンが、少し、情緒不安定気味なんだ。その所為で、『cavalier』を任せている優也までナイーブになってるし。目を離しておけない」

「………」

「それに、最近、『龍神連合』のヨシヒサも、俺に不信感を抱き始めているみたいなんだ。『龍神連合』自体も裏に潜り始めてるし、下手には動かせない」


じゃあ、私はどうなるの?

光希は私がどうなってもいいっていうの?


喉元まで出掛かった言葉を、透子はどうにか飲み込んだ。



「大変なの? 仕事の方」

「いや、そんなわけじゃないけど。諸々の状況が落ち着くまでは、念に念をという意味だよ」

「………」

「でも、俺の方でも何か策は考えてみるから。もう少しだけ待って」


光希はそう言ってくれるけれど。



「いいの。光希には光希の事情があるんだもの。忙しい時に、無理を言って頼るような電話をして、ごめんなさい」

「……透子?」

「大丈夫。私はひとりで大丈夫だから」


強引に電話を切り、透子は震える唇を噛み締めた。



物分かりのいいことを言ったのは、光希に嫌われたくなかったから。

面倒な女だと思われ、捨てられたくなかったからこそ、透子は、強がったのだ。


でも、本当は、何も『大丈夫』なんかじゃない。



「光希……」


透子はたまらず顔を覆った。