「―――……、」


頭が覚醒してそっと瞼をあげる
視界がぼんやりと霞む中、あ、と思い出す
そういえば、ここ屋上だっけ…と思いつつふと、自分が誰かの肩に寄りかかっている事に気づく
伊吹かな、と思ったがそれは一瞬だけで、少し癖のある香水の香りがふわっと漂い顔をしかめる

…私にとってはこれは、"クサイ"

香水はあまり好きじゃないんだよなー、と呑気に考えながら顔を上げて寄りかかってしまった人を見て、思わず目を見開いた



「……神崎…瑠佳斗…っ?」




思わぬ人物に驚愕していると、そいつはにこりと嬉しそうに微笑む



「あ、起きたんだ。ずいぶんぐっすりだったけど…疲れてたの?」


「え?あ、いえ、そんなことは…」



そこまで言って、ハッとなる


……今、何時だ…?



そんな私の様子に気づいたのかなんなのかは知らないが神崎瑠佳斗…王子は腕時計を見て再びにこりと笑む



「約20分前に6時間目の授業、始まったよ?」


「6時間目!?…嘘…」



どんだけぐっすり寝てたんだ私…!
……ていうか…


「なんで起こしてくれなかったの!?」


「あんな気持ちよさそうに眠ってるところを起こすのは悪いかなーって」


「サボることの方が悪いっ!」



…といっても、自分にも非があるのでそれ以上は言葉が出なかった



「……今から授業行く」


「え、今から?」



なぜ?とこちらを見つめて言ってくる王子に対して、私もなんで?と返す

すると王子はうーん、と顎に手を宛てながら悩んだ素振りをしたあと、再び私を見つめて首を傾げた


「授業はあと20分ちょっとしたら終わるし、今から行っても、逆に恥ずかしいんじゃないの?」


「…………」



……確かに。


ここまでくるともう行かない方がいいような気がしてきた
幸い、6時間目なのでこのあとはもう授業がなく、放課後。今日は帰りのHRはないのでちょうどいいのかもしれない



「……やっぱり、行かない」


「ふっ、賢い選択だね」



王子は楽しげにくすくすと笑っていた