――食堂――
「…うわっ…すごっ」
そこはもう、レストランのような場所。
テーブルの作りとかはほかの学校にある食堂と同じような感じだけど、装飾がもう、なんだか眩しい。
そういえば私、パンフレットかなにかで見たことあるけど、実際こうやって食堂にくるのは初めてだ…。
伊吹はあまり此処で食事を取らないとはいえ小学生からいたためか慣れているらしく気にせず券売機の方まで進むのを見て私も慌てて追いかけた。
「あ、見てみて!今日のオススメはオムライスだって!オムライスにしよっかなぁ」
…オ、オムライス…?
カレーライスとか丼ものが普通かと思ったんだけど……そうだ、此処は私立だ。そこらへんにあるような高校と同じだ、という考えは駄目だ。
「鈴音はどうする?」
「えっと…じゃぁ、オムライスで…」
伊吹と同じのにすると、了解!と、私からお金を受け取って券売機の方に向かっていってしまった。…あとのやりとりは伊吹がなんとかしてくれるだろう、うん。
暇になった私はぐるりと辺りを見渡す。
広さは体育館ぐらいの広さなんじゃないかってぐらい広い。そして人も、すごい。
確かに、高校生だけでも結構な人数がいるこの学園にとったら普通の広さかもしれないが…。…この学園にいると"普通"がわかんなくなってくるな…。
ちなみに小、中、高、大学まであると言ったが、この学園の敷地内で、
小中学校、高校、大学と分けられている。(寮もそれぞれあり、ちゃんと男女別になってる)そう考えると…この大和学園の敷地面積はどれだけあるのか……あまり想像したくはない。
私も此処に初めて来た時はかなりのでかさに驚愕した。
初めて大和学園にきた頃を思い出していると、遠くの方で名前を呼ばれているのに気づく。
伊吹がカウンターのところに気づくと、オムライスが出来たんだと理解した。
「ごめんごめん!」
「もーっ、さすがに二つも持って歩けないよー」
二人で談笑しながら席を探して、ちょうど二人席があいているのを見つけるとそこに座った。
「「―――…いただきますっ!」」
二人して手を合わせてお決まりの言葉を言うと、早速ぱくっと一口。
「んーっっ、美味しい…っ!」
「うわっ、本当だ…なにこれ、すっごい美味しい…っ!」
たまに外食とかお母さんのとか、自分で作ったりするけど…こんなに美味しいオムライスは初めてだ。なんだかやみつきになる。
「鈴音、たまにはこうやって食堂きて食べるのもいいね!」
「うん、また今度こよっか」
小さな約束を作っていると、食堂の出入り口部分で人だかりができているのが視界に入った。
…あれ、これ今朝も見たような…、と頑張って思い出していると、伊吹があ、と小さく声を漏らした。
「あ、王子じゃん」
「……本当だ」
王子?と思って目を凝らしてみると、その中心人物には王子こと、神崎くんの姿が。
人気者は大変だな。まともに食事も出来ないなんて…
と、哀れみの目を向けていたら、ふと、神崎くんと目があった瞬間、神崎くんの目が見開いた。…ような気がした。
いや、うん、気のせいかな。だって私たちが座ってるところと神崎くんがいるところ、大分離れてるもん。
そして気にせず視線をオムライスに戻し、またあの美味しさを堪能する。
伊吹も、もう気にしていないのかオムライスを食べながらまた別の話題を出してきたので、その話に耳を傾けた。