人だかりの中心にいる男…名前は確か、神崎 瑠佳斗(カンザキ ルカト)。学年も一緒だったはず。
顔立ちもよくスタイル抜群、まさに容姿端麗。そのうえ性格もよく勉強もスポーツもできて、何でもできちゃう万能なイケメン男子。
…とまぁ、これは伊吹からの情報。
確かに、群がる女の子たちを嫌な顔一つ見せず爽やかな笑顔で交わしていく辺り、性格がいい、というか…その状況に慣れているんだろうな、と思った。
そうやって神崎くんを見ながらブツブツ考えていると突然隣からぽん、と肩を叩かれた。
「えっ、なになに、まさか鈴音…瑠佳斗くんに惚れたとかっ!」
きゃーっ!と可愛い悲鳴を上げながら私の肩をバシバシ叩くこの可愛い子を一回殴りたいと思ったのはダメでしょうか。
「…何言ってるの。前にも言ったけど、ああいうのはあんまり興味ないし…確かにかっこいいけど…」
「けど…?」
「……次元が違うというか…」
そう。なんか次元がちがう。私がいるここが三次元だったらあそこはもはや二次元だ。
それに…あんまり関わりたくない、のが本音。
「何それ現実逃避!?」
「なっ、違うよっ!」
それに…、
「あんなかっこいいんだもん、私たちが関われる日なんてまずないと思う」
「…あー…確かにそうかも…」
伊吹も理解したのか神崎くんを見ると納得したように頷いた。
―――……そう、確か名前は、"ルカト"だったような気がする。
あのイケメン男子と名前同じみたいだけど…私の中のルカトくんは、失礼だけど、あんなかっこよくない。むしろ成長したらかっこいいというよりかわいい系で、神崎くんと別の意味でモテそう。うん、ありえる。
そんなことを考えながら私たちは人だかりをスルーしてさっさと校舎の中へと入っていった。